雨に唄えば。 road.3
私は考えていた。
お連れ様はどんな人なのか?
彼氏、友達、会社の同僚、家族…
最初に入口で接客して感じたインスピレーションとしては、友達か彼氏だと思った。
今は私は彼氏を待っていると考えていた。
彼女の表情から汲みとれるもの。
それは、刹那さだ。
なにか幸せなことが訪れる気配はない。
むしろ、良くないことが起こりそうな…
そんな気配を私は感じていた。
彼女がハンバーグを食べ終わって、5分くらいたっただろうか、
彼女はテーブルのピンポンを押した。
ピーンポーン!
広い店内のホールのフロアに、お客様は彼女だけになっていた。
私はテーブルに向かい、
「お伺いします」と言った。
「チョコバナナパフェをください」
彼女は食後のデザートをオーダーしたのだ。
まだ、彼女は彼氏待っているのか?
いや、来ない彼氏への怒りをデザートにぶつけたのだと思った。
私は白馬の王子さまが彼女の前に最後に現れることを、心のどこかで期待していたが、
そのチョコバナナパフェは、私にとって
諦めに変わる瞬間であった。
彼女はハンバーグを食べた後とは思えないほどの早いペースでパフェを食べ終えた。
彼女は立ち上がり、すっかり夕陽が沈み、窓に映った自分の姿を見ながら、椅子に掛けてあったグレーのチェスターコートに袖を通した。
私は窓に映った彼女の顔を見ていた。
彼女は窓に映った自分の姿を見ていた。
それは、新しい自分への一歩を踏み出すような
そんな風に私には見えた。
彼女はレジでお会計を済ませ、一人で歩き出した。
私は彼女の背中をただ見つめていた。
窓の外の雨はいつの間にか止んでいた。