雨に唄えば。 road.2
彼女がオーダーしたハンバーグが出来上がるまでは10分と少し。
彼女は頭を抱えて、少し険しい顔でスマホの画面を見つめていた。
彼女の座った席は入り口がすぐに見える席であった。
お連れ様がいつ来るか分からない状況であれば、彼女の目線は入り口に向けられるはずだ。
しかし、彼女はスマホとにらめっこをしたままだ。
10分はまだ経ってない時、彼女は顔を上げたが、その視線は入り口ではなく、窓の外の景色に向けられた。
外はまだ少し雨が降っていた。
厨房から料理が上がるベルが鳴った。
私は最後にもう一度、入り口のドアに目を向けた後、彼女のオーダーしたハンバーグとライスを手にし、テーブルへ向かった。
「お待たせしました!
イタリアンチーズハンバーグとライスでございます!」
彼女は少しだけ頷いた。
彼女が食べている時にも、私は入り口に何度か目を向けるが、気配はない。
彼女の食事が終わると、私は彼女のテーブルの鉄板とお皿を下げた。
彼女は広くなったテーブルの目の前で、すこしうつむいた後、また窓の外に視線を向けた。
やはり、入り口を見ることはなかった。