雨に唄えば。 road.1
1月の3連休が終わった平日の火曜日は朝から雨だった。
慌ただしいランチタイムも終わり、太陽が少し落ち始めた夕方
店内は落ちつきをみせ、有線で流れる洋楽のバラードが心地よい。
1人の女性の姿が、入り口の自動ドアの前に見えた。
私は自分の手で自動ドアのセンサーに手をかざし、ドアを開け、声をかけた。
「いらっしゃいませ!
1名様でよろしいでしょうか?」
彼女はすぐにこう答えた。
「あとからもう1人来ます。」
私は「かしこまりました」と答え
彼女を窓側の外の景色がよく見える席にご案内した。
窓の外にはまだ雨が降っていた。
彼女は20代の後半、セミロングの少し茶色の髪だが、とても清潔感のある服装で、深夜のローカル番組に出てる女性レポーターに少し似ていた。
彼女はグレーのチェスターコートを脱ぐと、持っていた2つの紙袋を自分の横の椅子に置き、メニュー表に目をやる。
私はすぐにお連れ様は来るのだろうと思った。
それは、レストランでよくある日常だからだ。
しかし、2分後に彼女のテーブルのピンポンは押され、私は彼女のオーダーに向かった。
「イタリアンチーズのハンバーグとライスをください」
私は彼女の口から発せられたオーダーを手慣れた操作でハンディーに入力した。
ハンバーグのオーダーが厨房に通り、料理があがってくるまで、10分と少し。
私は、彼女のお連れ様がハンバーグが出来上がるまでに到着することを、なぜか心で祈り始めた。